社長に聞いてみた!馬専門の馬糧屋「根岸馬糧」ってどんな会社?

競走馬や乗用馬の健康を守るために、自社でつくるオリジナル飼料をはじめ、厳選された飼料やサプリメントの製造・販売を行なっている根岸馬糧。馬糧を専業とするさまざまな企業がある中で、根岸馬糧がどんな価値観や考え方で日々の業務に励んでいるのか、根岸馬糧株式会社代表の根岸社長に聞いてみました。

—根岸馬糧は何をしている会社ですか?

根岸:根岸馬糧は、競走馬や乗用馬を専門とした飼料やサプリメントを主に取り扱っている会社です。前職からの知識と経験を活かし、2017年に個人事業主からスタート。2018年に根岸馬糧株式会社として法人化しました。2019年には千葉に倉庫を設け、現在は厳選した飼料やサプリメントのほかに自社のオリジナル配合飼料「オーガナイズ」を製造・販売しています。

—仕事をする上での「やりがい」は?

根岸:何を「やりがい」とするかは人それぞれだと思いますが、僕にとってのやりがいは、美味しそうにごはんを食べる馬を見ること。レースに出場して勝ち星を上げていかなければならない競走馬にとって唯一の楽しみは、美味しいごはんを食べる瞬間です。ビールやジュースが飲めるわけでもない、遊びに出かけたり、何かを楽しむといった娯楽もない。美味しいごはんを食べて命がけで走るという生き様だからこそ、心から美味しい!と思えるごはんを馬に食べさせてあげたいという思いがあります。

—根岸社長が馬糧の世界に興味を持ったきっかけは?

根岸:小学生の頃、ダービースタリオンというゲームにハマっていた時期があるんです。それがきっかけで親が中山競馬場に連れて行ってくれたのですが、そのとき目に留まったのが、足を骨折した競走馬。「あの馬はどうなるの?」と聞いたその答えは「ケガをしているから殺される」ということでした。ええっ!?と、ゲームとは違う厳しい現実を子どもながらに突きつけられたのを今でも覚えています。そこで僕が思ったのは、競走馬がケガをしない何かを自分でやりたいと思ったこと。そこから乗馬に興味を持ち、紆余曲折の末、馬糧の仕事と出会いました。

—馬糧の仕事で大変だと感じたことは?

根岸:良くも悪くも狭い業界ですので、横のつながりや人脈が大事。あらためて考えると、相手に顔を覚えてもらう第一歩がとても大変なんです。自分らしさを出しながらも相手が心地いいと思える距離感と空気感で接していますけど、それは「“根岸さんらしく”でいいんですよ」と人からいわれたことが大きいですね。ほどよい距離感で自分をつくりすぎない「素」を出することは、日頃から心がけています。

大切にしているのは「不易流行」という考え方

—根岸社長が仕事をする上で大切にしていることは?

根岸:僕の中ですべてを言い表せるか分からないけど「不易流行」という言葉を意識しています。これは松尾芭蕉が示した俳諧の理念で、いつまでも変化しない本質的なことを示す“不易”と、時代に合わせて新しいものにアップデートしていく「流行」の相反する概念が組み合わさった言葉。根岸馬糧が提供する飼料を馬が美味しく食べてくれるのが一番ですが、どんな時でも不易流行という姿勢を持って仕事に取り組んでいます。

—根岸馬糧の強みといえば?

根岸:根岸馬糧が絶対の自信を持っているのは、アフターフォローの在り方です。正直な話、飼料を購入する先は他にもあります。そうした中で根岸馬糧に期待されるのは、馬の状態や性格を考慮した体調管理や餌のやり方をお伝えすること。毎日変化する馬の健康状態をしっかりチェックした上で飼料のアドバイスを行うことは、長年取引をしている先からも信頼をいただいています。

例えば、オリンピックやインターハイに出場するような馬が厩舎に入ったとき、アスリートといえど馬が持つ個々の能力は違います。それぞれの馬が最大のパフォーマンスを出せるよう飼料の内容が変わることはよくある話。そして馬の性格もバラバラです。気の強い子、気の弱い子、マジメな子、純粋な子、計算高い子……本当に個性豊かですよね。飼料の回数を分ける、手にのせて食べさせる、ミキサーで砕くなど、馬の性格を把握した上でどうアプローチすればスムーズに食べてくれるのか、これまでの知識や経験から伝えていくことも僕の仕事。そこから新しい取引につながるケースもあります。根岸馬糧なら何か新しい提案をしてくれる、そんな期待に応えたいという思いもありますね。馬の健康に関しては、誰にも負けたくないです。

—どうやって馬とコミュニケーションを取りますか?

根岸:シンプルに触ることです。思いっきり可愛がってほしい馬もいれば、サラッと触るのを好む馬もいて、本当に繊細な生き物。ニオイにも敏感で、首筋を嗅いで人を確認するので香水を付けていると警戒されます(笑)

社員に敬意を持つことを忘れない

—馬糧の業界は土日休みなしといわれていますが、休日に対する考えは?

根岸:馬糧屋は休みが少ない業界ですけど、根岸馬糧の社員(配達員)は、土日を休みにしています。ほぼ残業がなく定時で帰宅できる仕事とはいえ、休みがないと社員のモチベーションが上がらないと僕自身は考えていますので。結婚して子どもがいる社員も働いているので、子どもの行事イベントがあれば、よほどのトラブルがない限り休みを取ってもらうのが根岸馬糧のスタンス。休むことは否定しません。むしろプライベートが充実するリフレッシュ休暇であれば、それが仕事にも良い影響を与えると考えています。ポジティブな形で次につながると思うし、そうであってほしいですね。

—社員の給料について、どう考えていますか?

根岸:業務を早く終えるということは、その人の能力が高いという証拠。優秀な人材に長く働いてもらうためにも、基本給やボーナスに反映していくことは常に考えています。そもそも当たり前の仕事を継続して続けていくことそのものが、実はとても難しいこと。経営者が自分と同じものさしで社員に求めるのではなく、従業員の視点に立って彼らのものさしで物事を見極めることが大事なのではと思います。

競走馬の健康を支える「縁の下の力持ち」として活躍している馬糧業界。読んでいただいた方に、根岸馬糧の社風や企業としての姿勢を感じてもらえたらうれしいです。